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〈章番号〉3-4.2.2.2火山活動の影響に対する設計方針
4.火山事象の影響評価
[意見-1]
1.九州電力は、約1万2800年前におきた桜島薩摩噴火を降下火砕物の
原発に対する影響が最も大きい噴火と判断した。その理由は噴火の規模と
原発からの距離である。しかし、規模は桜島薩摩噴火より小さくても、過去
数百年の間に原発から160㎞以内の地域で発生した大規模な噴火ついて
も検討すべきである。
2.過去数百年間の噴火については、火山灰粒子が原発の敷地内で
どのように濃度分布したかを推定すべきである。
[理由]
1.桜島薩摩噴火と過去数百年間の噴火では、影響に関する考え方が異なる。
前者は極めて稀にしか発生しないが、一旦発生すると、粒径の大きな
降下火砕物が強力な破壊力を発揮するという考えに立つ。
一方、後者は数百年周期で発生し、一旦発生すると、火山灰
(平均粒径2mm未満の降下火砕物)に含まれる微粒子が安全装置の内部に
侵入して強力な破壊力を発揮するという考えに立つ。
2.火山灰粒子の濃度分布を推定することは火山灰の影響を評価する上で
不可欠な作業で、その結果は設計方針を左右する。
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〈章番号〉3-4.2.2 火山活動の影響に対する設計方針
8.降下火砕物の直接的影響に対する設計方針
[意見-2]
九州電力の設計方針は高濃度の火山灰微粒子による影響を全く検討対象に
含めていない。規制委員会は、このような設計方針を認めてはならない。
[理由]
1.数百年に一回規模の大噴火がおこると、粒径が数μm以下の微粒子を
高濃度に含む火山灰が原発敷地内に立ち込める可能性がある。
その場合、この設計方針では、全交流電源の喪失と非常用ディーゼル発電機
の機能喪失が同時に発生する重大事故を避けることができない。
2.九州電力は、原発敷地内に火山灰微粒子が高濃度に立ち込める状態を
想定していない。その結果、非常用ディーゼル発電機は粒径が数μm以下の
火山灰粒子に対して無防備な状態に置かれている〔1〕。
* 発電機の設置室:部屋の外気取り入れ口には平型フィルタが設置されて
いるが、粒径6.6μm~8.6μmの火山灰粒子を85%しか除去できない。
* 発電機本体:吸気フィルタは粒径120μm以上の粒子を90%以上しか
除けないので、粒径が数μm以下の火山灰粒子はシリンダライナーと
ピストンリングの隙間(油膜厚さ相当:数μm~数十μm)に侵入できる。
3.Labadie J.R.は1980年のセント・へレンズ山大噴火による火山灰被害の
調査と被害軽減策に関する報告書〔2〕の中で、火山灰の微粒子はコンピュータ
や発電機の非常に狭い隙間や継ぎ目に侵入して、それらの機能を
喪失させると指摘している。
4.規制委員会は現在行っている審査を中止して、過去数百年の間に
原発から160kmの地域で発生した大規模な噴火による火山灰の影響を
検討する必要がある。
検討対象は、原発敷地内における火山灰微粒子(粒径0.5μm~120μm)
の濃度分布及びディーゼル発電機の機能に対する影響とし、それぞれに対して、
地質学的調査とその結果に基づく数値シミュレーション及び工学的な
モデル実験が行われなければならない。
規制委員会は、これらの検討を九州電力と利害関係のない専門学会に
委託すべきである。
[文献]
1.九州電力 降下火砕物(火山灰)による設備影響評価について
補足説明資料:資料3-3 平成25年10月22日
2.Labadie J.R.、1983,Volcanic ash effects and mitigation. Report prepared
for the Air Force Office of Scientific Research and the Defense
Advanced Research Projects Agency
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