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瀬戸内寂聴さん 「変われるから希望を」 ~被災者が編んだショール~
地方を犠牲にして成り立つ中央、人間より国家を優先する在り方、科学技術への過信…
東日本大震災で露呈した矛盾や問題点は、さらに深刻化しているようにもみえる。
しかし今、私たちはそのことから目を背け始めてはいないか。
多くの命を奪った震災から3年、日本の航路を危ぶむ6人に聞いた。
☆記事本文☆
この手編みのショール、いいでしょう?すごく暖かいの。夜中に原稿を書いているときも、
肩に掛けています。東日本大震災で被災した、飯舘村のおばあちゃんが編んでくれたんです。
震災後、何度か被災地を訪ねました。
お見舞いに行くとみんな喜んでくれましたが、あの年の秋の飯舘村だけは違った。
誰もが顔をこわぱらせていて、厳しい表情です。それで「みんな疲れているわよね。
私、小説よりあんまが上手なの」と、そこにいたおぱあちゃんの肩をもんであげたのね。
そうしたら場が和んで、みんながつらいことや政府に腹が立つことを口々に話しだした。
つらい思いは、口に出すことで少しは楽になるから。
それから1年以上がたった冬、仙台で講演をしたときに、あの飯舘村のおばあちゃんが
来ていて、ショールと帽子をくれたんです。
「寂聴さんも寒いでしょう。毛糸をもらったから、あんまのお礼に」って。
原発事故で村に住めなくなり、家族もバラバラな状況なのに。その優しさに心打たれました。
震災から3年がたち、政府は今、そういう人たちを放ったまま、東京五輪の開催決定で
浮かれています。
原発は汚染水を垂れ流し続けているのに、安倍晋三首相は「コントロールされている」
と平気で言う。
目の前に華やかなことがあれば国は治まっているようにみえると、震災のことを
忘れさせようとしているのでしょうか。
五輪を開催する余裕があるなら、避難生活で苦しんでいる人たちが戻れるようにすること、
今いる環境を少しでも住みやすくすることが、政府のすべきことです。
人間は忘れるという能力が与えられているから、生きていける。
忘れなければ生きていけないような、つらいこともある。
でも、決して忘れてはならないこともある。それが震災です。原発事故です。
「代受苦」という仏教の言葉がありますが、私たちがこうして生きていられるのは、
震災で亡くなった人たちが代わりに苦しみを受けてくれたから。
だからこそ、忘れてはいけない。
以前、津波で行方不明になった後、遺体で見つかった人たちの名前を新聞で探し、
ノートに書き写して私に送ってきた人がいました。
「自分は被災しておらず、何の力もないけれど、せめてノートにその名前を書き続けるので、
寂聴さん、祈ってください」と。人間はすごい、と感動しました。
人間も、ものも、すべては変わっていきます。
今の世の中が悪くても、「変われる」と思うから、私は希望を捨てられないのです。
今年92歳になりますが、この、不安で危険な国を残しては死ねません。
ちょっとでも良くし、「ここまでしかできなかったけど、ごめんね」
と言って、子どもたちに手渡したいのです。
(記事書き起こし終わり)
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